Column[ 読みもの ]

玉村豊男ブログ『ワインバレーの未来を考える2018』

2018年02月03日

関酒店で売るワイン

村の酒屋を復活させる・・・「関酒店復活プロジェクト」については、昨年の秋、クラウドファンディングをおこなうときにこのブログでも紹介しました。おかげさまで、目標額の700万円が期限内に集まり、この冬から工事がはじまります。

関酒店というのは、戦後まもなくから10数年前まで、田沢の村の入口で営業していた酒屋さん。お酒やタバコから、ちょっとした日用品まで売っている、村びとが集まる場所にもなっていたお店です。昔はどこの村にもそんな店の一軒や二軒はあったものですが、田舎でもみんなクルマに乗ってスーパーへ買物に行くようになると、後を継ぐ人もないのでそういう店は潰れていき、村の中で循環していたおカネは外へ出ていってしまいます。

そんなグローバル化の風潮に抵抗して、ローカルな村に暮らしと経済を取り戻そう、というのが「関酒店復活プロジェクト」の趣旨で、多くの人の賛同を得て、空き家になっていた昔の酒屋さんがこの4月には復活します。

村・・・と私が呼んでいるのは、東御市の「田沢区」というところ。関酒店も、ヴィラデストも、田沢区にあります。アルカヴィーニュは田沢区の北端にあり、地籍は北側の「西入区」に区分されますが、「区」というのは住居表示には使われない、自治組織による区分なので、私はだいたいの範囲をさして「(田沢)村」と呼んでいます。200世帯600人という規模ですから、そう呼ぶのがふさわしいでしょう。

私はこの村の隣組の仲間を誘って、5年ほど前から、「田沢おらほ村」という名前の、地域活性化をめざすグループを立ち上げました(「おらほ」は「自分たちの」という意味の方言です)。メンバーは当初から少し増えて、いまは、ほぼ20人くらい。年齢も職業もまちまちですが、誰もが地元で古くから農業に携わっている、頼もしい生活者ばかりです。が、多くは(私のような)老人なので、復活する関酒店は、アルカンヴィーニュのすぐ下の畑にブドウを植えた、千曲川ワインアカデミーの第一期生を新しいメンバーに加えてスタートします。

さて、関酒店では、なにを売るか。

村の酒屋、ですから、村の人が飲むお酒。安い日本酒に、焼酎、発泡酒……まずは地域住民の需要を満たすのが第一の目的です。これまでスーパーやディスカウントショップで買っていたお酒を、村の酒屋で買ってもらう。価格競争は辛いところですが、あまり大きな差がなければ、愛郷心から関酒店で買ってくれることでしょう。配達サービスをする、というのも、高齢家庭に訴えるポイントかもしれません。

ワインは、もちろん売ります。場所柄、当然 NAGANO WINE 、それも千曲川ワインバレーのワインは、できるだけ取り揃えたい。田沢にある3つのワイナリー(アルカンヴィーニュ、ヴィラデスト、ドメーヌ ナカジマ)では、それぞれ自分の工場で造ったワインしか売れません。果実酒製造免許にともなう自社製品の販売免許はあっても、一般酒販免許がないからです。その点、小売の酒販店である関酒店では、どのメーカーのワインも扱えます。

東御市内で日本ワインが買える店はまだ少ないので、関酒店で売れば、ワイナリーを訪れる観光客が立ち寄ってくれるかもしれません。が、それは春から秋の観光シーズンの週末くらいですから、たいした量ではないでしょう。とくに平均3000円はする地元のワインは、村の人たちは買わないと思います。

もちろん、村の人にもいろいろな機会に地元のワインを飲んでもらうよう、仕掛けたいとは思いますが、飲んでもらえなければもらえないで、当面はそれで構いません。地元の人には、まず、安くておいしい外国ワインから飲んでもらえばよいのです。これまで飲んだことがなかったワインというものを、関酒店でみんなが飲んでるからウチでも飲んでみようか、1000円なら買えるから試してみよう・・・と、思ってもらえたら、大成功です。

1000円前後で買える、おいしい外国ワインを選んで店に置く。飲んだことのない人に、飲ませてみる。無理やり口を開けて・・・というわけにはいきませんが、関酒店の前の眺めのよいテラスで、あるいは母屋の縁側で、楽しそうにワインを飲んでいる人の姿を見れば、その気になる人もいるでしょう。

人は、どこかでワインと出会う機会さえあれば、最初から「おいしい」とは思わなくても、何回か誘われて飲んでいるうちに、かならず「ワインの味がわかる」ようになります。

おいしさを表現する言葉を見つけることはできなくても、どのワインが好きでどのワインが嫌いか、くらいは、誰に教わらなくても、自分でわかるようになる。

そうなったら、とくにそれ以上を求める必要はありません。もちろんそこからもっと勉強してワインに詳しくなろうとするのは自由ですが、誰もがそうする必要はないのです。ソムリエのような知識はなくても、「好きか嫌いかがわかる」だけで、あなたは立派な「ワイン飲み」です。世界中で毎日のようにワインを飲んでいる人のほとんど(おそらく95パーセント以上)は、そのレベルだと思います。