Column[ 読みもの ]

『玉さんの信州ワインバレー構想レポート』(KURA連載)

2015年09月02日

玉さんの信州ワインバレー構想レポート ⑪

それではピカピカの建物を案内しましょう

アルカンヴィーニュ。フランス語で「虹」をあらわす「アルカンシエルARC‐EN‐CIEL(空にかかるアーチ)」という言葉の「空CIEL(シエル)」を「ブドウVIGNE(ヴィーニュ)」に代えて、「アルカンヴィーニュ ARC‐EN‐VIGNE(ブドウが繋ぐ人のアーチ)」と名づけた新しいワイナリーが、いよいよ完成しました。

といってもまだ建物が出来上がったばかりで、看板もかかっていなければ郵便受けもない、事務所の机もまだ入っていないので床に書類を広げているような状態ですが、とにかくできたばかりの建物をご案内いたしましょう。

場所は、ヴィラデストワイナリーの少し先。東御市田沢の交差点から金原ダムをめざして山のほうに登り、ブドウ畑の角をヴィラデスト方向に右折するところを、曲がらずに直進してください。広い道路はその先で道なりに左へ大きく蛇行し、さらに右に折れながら大田区休養村のほうへ向かいます。と、左手にそろそろ壁に青い線が入った白い大きな建物が見えてきますから、ゴルフ場のほうへ左折せずにもう少し進めば、そこがアルカンヴィーニュの入口です。さあ、とにかくお入りください。

入口のドアを開けたところが、試飲のできるショップスペースです。正面がカウンターで、その手前に大きなテーブルがあります。大工さんに頼んで作ってもらったのが、きのう出来上ってきました。まだイスは揃っていません。右側手前にある大きな棚は、ワイン関係の本や資料を並べる書棚です。まだガラガラですが、すぐにいっぱいになるでしょう。販売するのではなく、自由に手にとって読んでもらうための本です。反対側の白い壁には、ブドウがワインになるまでの過程を説明した文章と写真を、パネルにしてぐるりと貼りめぐらすつもりです。

もちろん、ワインも飲めます。当面は、この新しい工場ではまだ醸造がスタートしないので、お出しできるのはヴィラデストのワインですが、この秋には醸造を開始しますから、来年からは近隣の新規就農者などが育てたブドウからつくったワインが他に先駆けて揃うはずです。書棚に続く一角が、そのワインを並べるためのウォークイン・セラーです。ワインはボトルでの販売もしており、セラーは木の扉を開ければ中のボトルを取ることができるようになっていますから、ご自由に選んでいただくことができます。

ワインの楽しさを知る場所に

セラーの先を左に入ったところがワーキングルームです。どうですか、素晴らしい眺めでしょう。建物の西側が大窓になっていて、遠く北アルプスの稜線が望めます。眼下にあるのは、東御市から上田市に至る街並みと、千曲川の流れに沿った河岸段丘。まさしく「千曲川ワインバレー」を一望するロケーションです。ワーキングルームは、ここでラベル貼りや出荷のための梱包などの作業をするためワーキングルーム(作業室)という名前がついているのですが、広くて眺めのよい部屋なので、アカデミーの講義もここでおこなうほか、さまざまなイベントの会場として利用しようと考えています。

アルカンヴィーニュはワインの生産販売施設であると同時に、多くの人にとってワインの楽しさを知ってもらうためのきっかけの場所となることが大きな目標なので、これもまたひとつの「仕事のための部屋(ワーキングルーム)」と考えているのです。試飲会、講演会、セミナー、ワインパーティー。一口に言えば販売促進のためのイベント、ということになりますが、多くの人にワインのことを知ってもらい、日常の暮らしの中でワインに親しんでもらい、そう、地元の人たちにも訪ねてくる人たちにも、もっとたくさんワインを飲んでもらって、この地域を消費と生産が一体になった、地産地消のワイン産地にしていきたいのです。

イベントの企画はこれから考えますが、私自身もセミナーを開こうと思っています。題して、「玉さんワイン塾」。世界を旅してあちこちで出会ったワインの話とか、その土地の料理の話とか、なにが飛び出すかはそのときのお楽しみですが、今年の秋で70歳になる私は、歳の数に近いほどの外国を旅行していますから、頭がボケる前に覚えていることをみんな話しておこうと思います。私の話が終わったら(アルカンヴィーニュでは食事を提供しないので)みんなでヴィラデストに移動して、食事をしながら会話を楽しむ、というのはどうでしょうか。もちろん、ワイングラスを片手に……。

ワインを飲む人が増えたといっても、まだ日本人一人当たりのワイン消費量は、年間四本程度に過ぎません。私は一週間で四本飲みますが……せめて、一ヵ月に四本くらいは飲むようになってほしいですね。そのためにもまずは地元から、というわけで、「散歩でワイン」という講座(サンデー・ワインサロン)も設けたいと思っています。日曜日の午後、ふらっと散歩に出かけたついでに立ち寄って、講師からワインの手ほどきをうけながらグラスを傾ける……なんだか楽しそうな場所になりそうですね。

あ、まだ建物の案内が残っていました。ワーキングルームの向かい側、セラーの裏手に当たるドアを開けると、そこは映像が見られる試飲室になっていて、大きなガラスの仕切りを通して、工場のほうに下りる階段が見通せます。下り切ると、そこが工場の入口。ここには消毒用のマットを置く予定で、見学者が靴をはいたまま指定の通路を歩けるようにしたいと考えています。

通路の左側が、ボトル貯蔵庫と樽貯蔵庫。シャッターを閉めていても両脇のガラス窓から中を覗けるようになっているのも、見学のための工夫です。で、右側を見てください。ズラリと並んだステンレスタンクの列! まるで工場みたい……って、実は工場なんですが、手づくり工房の雰囲気溢れるヴィラデストと較べると、かなりイメージが違います。このワイナリーは、地域で栽培されるブドウを受け入れて醸造するために、3万本から5万本、ヴィラデストの約二倍の製造量を確保することが求められているからです。

趣旨に賛同して出資してくれた個人のお客様や投資家による出資に加えて、国と地域の金融機関で立ち上げたファンド(信州アグリイノベーションファンド)による投融資、それに農水省の補助金(6次産業化ネットワーク活動交付金)、さらには地域の農協(JA信州うえだ)による出資もあり、いわば「みんなのお金」でつくることができた施設なので責任は重大ですが、建物ができたからには中身を充実させていかなければ、と身を引き締めているところです。
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設立に関わった関係者の方々をお招きしてお披露目会を開きました。

(KURA 2015年5月号)