Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2018年02月09日

ワインを飲んで泊まれる場所

眺めのよいテラスでワインを・・・といっても、日本では昼間からワインを飲む人は少ないでしょう。ワイナリー巡りに来る観光客なら、クルマを運転している人以外はたいがいワインを飲みますが、地元の人たちに昼酒をすすめるわけにもいきません。住民が関酒店の角打ちを利用するおもな時間帯は、やっぱり夕方以降になると思います。

しかし、そうなると、勤め帰りに外のテラスで一杯飲んで、暗くなったら家に帰って家族と夕食・・・というケースは大歓迎ですが、母屋の座敷に上がり込んで夜遅くまで宴会をやられるのは困りもの。酒店の営業時間をいつまでにするか、という問題も絡んで、このあたりはちょっと悩ましいところです。

私たち「田沢おらほ村」の仲間は、村の酒屋を復活させる「関酒店復活プロジェクト」に続いて、民泊(ワイン農泊)「清水さんの家」をつくる計画に着手します。関酒店から歩いて2分のところにある、築90年の古い住宅が空き家になっているので、そこを泊まれるように改修して民泊にしよう、という計画です。

この民泊に「ワイン農泊」というサブタイトルをつけたのは、そこに泊まれば夜遅くまで語り合いながらワインが飲めて、アルカンヴィーニュの千曲川ワインアカデミーで学ぶ生徒たち(すなわち未来のワイン農家)とも、親しく交流することができる。季節にはそこを拠点に収穫や畑の世話など、ワイン農業体験をすることもできる・・・という意味で、「ワイン産地にある民泊」であることを強調したいからです。

千曲川ワインアカデミーは、今年で4年目を迎えます。今年は開講日を週末にしたこともあって、全国から予想を大きく超える応募者がありました。仕事を持っている人でも土日だけ来ればよいので、その分、応募者の職業の幅も広がり、さまざまなスキルや経験を持った人たちが集まっています。第4期の講義がはじまるのは4月からですが、彼ら彼女らが(女性が3分の1以上います)ワインバレーにどんな刺激を与えてくれるか、いまからとても楽しみです。

「清水さんの家」ができれば、アカデミーの講師も受講生も、歩いて通える距離に宿泊することができます。第4期生が1泊2日で泊まるのは講義のある土曜日だけですが、これまでの卒業生たちや、多くのワイン関係者が、なにかにつけてここを利用するようになるでしょう。もちろん一般の観光客も、地元の住民も、そこに参加してワインを飲みながらともに時を過ごすことができるので、ワインに対する関心は自然なかたちで村の中に広がっていくのではないでしょうか。

「関酒店」に「清水さんの家」。田沢おらほ村が進めている計画は、「アカデミーの生徒や卒業生が集まる場所をつくる」と同時に、「ワイン産地なら日常にワインを飲むのがふつう」という文化を地元に根づかせるために「生まれて初めてワインを飲む人」を増やすのが目的のひとつでもあるのです。