Column[ 読みもの ]
日本のワインのこれからを考える 2019
2019年04月12日
はじまりは甘味ブドウ酒
それまでワインを飲む習慣がなかった国で、はじめてワインがつくられて、国内で販売されると、ほとんどの場合、売れません。その国で伝統的に飲まれてきたお酒とは(ビールにしても日本酒にしても)味わいが大きく異なるため、渋いとか酸っぱいとか言われて、消費者に受けないのです。そのため、まずは初心者にも女性にも好まれるような、「薄くて甘い」甘味ブドウ酒がつくられるようになります。
いまでは世界を代表するワイン産地になっているカリフォルニアやニュージーランドなどでも、最初は甘味ブドウ酒の生産から「ワインの大衆化」」がスタートしました。そして消費者が「飲みやすい」甘味ブドウ酒によってワインという名の飲みものに親しんでから、少しずつ「本格ワイン」への導入がはじまるのです。カリフォルニアもニュージーランドも1970年代からブドウ栽培とワイン生産の改革がおこなわれ、今日の繁栄へと繋がっていくのですが、それまでは30年以上も甘味ブドウ酒の天下が続きました。
日本で「本格ワイン」の消費量が「甘味ブドウ酒」の消費量を超えたのは、1970年代のなかば、とされています。「ワインといえば赤玉ポートワイン」という時代が半世紀以上も続いた後、ようやく初心者向けのイミテーションワインの味に飽きた消費者の関心が、本物のワインへと向かうのです。