Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2017年08月23日

OIVテイスティングシート

こんにちは。ひさしぶりです。すっかり長いこと御無沙汰してしまいました。前回の更新から4ヵ月ですね。申し訳ない。体調が悪かったわけではなく、いろいろやることが重なって時間が取れませんでした。

前回の話題は、昨年4月におこなわれたポルトガルの国際ワインコンテストのことでした。ヴィーニョ・ヴェルデのワイン協会が、立派なテイスティング施設をもっている、という話です。いつか、このような施設を日本にも、長野県にもつくりたいですね。

この審査会のときに使われたのはOIV(国際ワインブドウ学会)のテイスティングシートです。日本では、長野県の原産地呼称管理委員会の官能審査でも、山梨の日本ワインコンクールの官能審査でも、20点満点で採点するテイスティングシートが使われています。が、私は自分で実際にやってみて、100点満点方式のOIVテイスティングシートはきわめて優れていると感じました。

実際、世界各国でこの方式を採用するところが増えていると聞きますが、私はこのときの経験以来、この100点満点のOIVテイスティングシートを使って、もっと多くの人に、ワインを愛する消費者のすべてに、自分の感覚でワインを評価してもらいたい、と考えるようになりました。

再開した「ワインバレーを見渡して」では、随時(どのくらいの頻度かまだわかりませんが)更新して、この問題をとっかかりに、私の考えをみなさんに聞いてもらいたいと思います。が、その前に、「関酒店復活プロジェクト」のお知らせを。実は、この企画に取り組んでいたために、時間がなくなっていたのです。ようやくクラウドファンディングをスタートさせる段階まで来たので、発表させていただきます。お友だちお知り合いに声をかけて、パトロンとしての参加を呼びかけてください。

          村の酒屋を復活させる―――「関酒店復活プロジェクト」

          クラウドファンディングに是非ご協力をお願いいたします。

昔あった「村の酒屋」を復活させて、都会から来る人と地元の人がいっしょになってワインを飲めるような場所をつくりたい……という企画です。そのための空き家の改造や古い小屋の取壊し、テラスや農産物直売所の整備などにかかる費用を、クラウドファンディングで調達することにしました。リターンには、ワインや農産物をお届けする、農作業や味噌づくりに参加するなどさまざまな農業体験・田舎体験をやってみる、名誉村長になる……など、いろいろなコースを用意しています。ぜひ、コースを選んで参加してください!

下記サイトからお申し込みください。

            → http://camp-fire.jp/projects/view/39802

以下は、その「趣意書」です。お時間のある方はご一読ください。

田沢ワイン村「関酒店復活プロジェクト」:村の酒屋を復活させる

シルクからワインへ

長野県東御市では、シルク産業が衰退して50年前に荒廃した桑畑が、ワイン用ブドウ畑として再生されています。その発祥の地である田沢地区には、年間3万人の観光客が訪れるヴィラデストワイナリーを初めとする3社のワイナリーがあり、アルカンヴィーニュで開講される「千曲川ワインアカデミー」には、ワインづくりを目指す新規就農希望者たちが全国から集まってきています。

田沢地区

田沢地区は、烏帽子岳の山麓を切り拓いた集落で、現在は約200世帯600人あまりが暮らしていますが、人口減少時代を迎えてこの地区にも高齢化の波が押し寄せ、養蚕が盛んな頃に建てられた立派な民家にも空き家が目立つようになりました。しかも、それらの空き家はほとんど放置されたままで、新規就農者が借りたり移住希望者が泊まったりすることはできません。また、村の中には一軒の商店もなく、公民館以外には人が集まる場所もないので、ワイナリーやゴルフ場や温泉を訪ねて外から来た人たちも、村の中にまで足を運んで人びとと触れ合う機会はありませんでした。

縁側カフェ

こうした空き家を活用して、村の住人と外から訪ねて来る人たちが、気楽に出会って交流することのできる場所をつくることはできないか。昔の縁側のように、自由に人と人とが出会い、お茶を飲みながら話ができる、「縁側カフェ」のような空間が……。そんな場所ができれば、おたがいに触れ合うことで理解が深まり、そのうちに少しずつ古い家が新しい住人を迎え入れて、かつて養蚕で栄えた古い村は、新しい「ワイン村」として、次の世代に引き継がれるのではないだろうか。

おらほ村

そう考えた私たち田沢区民の有志は、5年前に「田沢おらほ村」というグループを立ち上げ、地区を紹介する案内図や旧跡の解説掲示板を設置したり、集落を見下ろす里山に道をつけて遊歩道にしたり、東京や地元で自分たちがつくった農産物を直売するなど、さまざまな活動をおこなってきました。そして今年は、空き家になっていた昔の酒屋さんの家を借り受けることができたので、店舗を復活させて営業を再開し、目標としていた交流の場をつくる計画に取り組むことになりました。

村の酒屋

関酒店は、山を上って田沢の集落に入っていく道のちょうど入口に当る位置にあって、神社の祭りや祝い事があるとき、また隣組や消防の寄り合いがあるときなど、誰もがこの店にお酒を頼んだものでした。お酒のほかにも缶詰やちょっとした食品が置いてある、地域住民の暮らしに欠かせないこうした店はかつてどこにもあったものですが、時代とともにひとつふたつと消えていきました。その酒屋さんを復活させて賑わいを取り戻すことは、現代の私たちが失った懐かしい暮らしの手触りを思い出させ、都会からこの地を訪ねて来る人びとや田園への移住を考えている人びとにとっては、地域住民と交流してたがいの共感を呼び起こすための、格好の触媒となるに違いありません。

関酒店の営業品目

酒類=ワイン、シードル、日本酒、ビール、焼酎など

加工食品=チーズやオイルサーディンその他ワインに合う酒肴のほか、田沢および県内でつくられた漬物、乾燥果実、ジビエ製品など瓶缶詰袋入り等パッケージ商品(その場で食べられるもの)。

雑貨=ワイングラス、ソムリエナイフなどのワイン小物、食器、文具など。

ワインは、千曲川ワインバレー産を中心にNAGANO WINE ブランドを取り揃えます。また上質な割に安価な外国ワインをソムリエが厳選し、お勧めの品を手頃な価格で提供します。

角打ちワインバー(縁側カフェ)

関酒店でお買い求めになったワインなどの飲みものやおつまみは、野外のテラスでも、母屋の縁側でも、あるいは部屋や土蔵の中でも、お好きなところでお召し上がりいただくことができます。グラスや栓抜き等は販売もしていますが、ご自由に使えるものも用意しておきますので、田舎の親戚の家に上がり込んで一杯やるつもりで、ユニークな「角打ちワインバー」をお楽しみください。

もちろん、お酒を召し上がらない方も大歓迎。農家手づくりの漬物などをおともに茶飲み話を楽しむ、気軽な「縁側カフェ」としてご利用いただけます。

農産物直売所

私たちは、酒屋さんの敷地の中に、農産物の直売所を設けます。田沢区内の農家が育てた野菜、花、果物、コメやソバ、山に入って採ってきた山菜やキノコなど、季節に応じて飛び切り新鮮な農産物を、良心的な価格で提供します。 

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 田沢ワイン村株式会社

関酒店のほかにも、田沢にはすでに何軒かの空き家があり、その数は増える一方です。私たちは、空き家の所有者と交渉して、必要な片付けや掃除、最低限の修理とバス・トイレの改装などを施した上で、それぞれの状況に応じて、民泊、貸家、シェアハウスなどとして活用できるようにしたいと考えています。そのために、私たち「おらほ村」メンバーの全員が出資して、「田沢ワイン村株式会社」という事業開発会社を設立しました。関酒店復活プロジェクトは、田沢地区の空き家利用の最初のケースです。今後、こうしたケースがしだいに増えていけば、それらの空き家のひとつが田沢地区の観光案内所ないし移住相談所、あるいはホスト不在型民泊のフロントとしての機能を果たすことになり、将来はそこを拠点として、ひとり暮らし老人の買物を代行したり、料理をつくって宅配するなど、高齢者をケアするシステムを構築することも可能でしょう。都会の高齢者は大手介護サービス会社のケア事業や料理の宅配サービスを受けますが、田舎の小さな村では、昔ながらの村の風景の中にある古い家に住んだまま、昔から耕してきた田畑と慣れ親しんだ里山の森に囲まれたまま、高価な高齢者用マンションで暮らすのと同じか、もっと上質な、心のこもったケアサービスが受けられる……。国や県や市の大きな単位では、こうした夢を実現することは不可能です。が、小さな村の単位でなら、決して不可能ではないと私たちは信じています。その試みを「昔あった村の酒屋を復活させる」という小さな計画を足がかりにスタートさせ、やがてはこのモデルを全国の同じような状況の地域に波及させることができれば、というのが、私たちの大きな願いです。