Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年03月26日

国内製造ワイン

2018年10月30日から適用となった国税庁による表示ルールでは、日本国内で製造されるワイン(国内製造ワイン)のうち、「国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」を「日本ワイン」と呼ぶ、と規定されています。「日本ワイン」以外の、すなわち海外原料を一部でも使用して製造された「国内製造ワイン」については、表ラベルに「海外原料使用」ないしは「濃縮果汁使用」などの文言を表示することが義務づけられるようになりました。

これまで、国内で製造されるワインは、海外から輸入した濃縮果汁を使用したワインでも「国産ワイン」という呼びかたで流通してきましたが、今後、この呼称は使えなくなります。が、大手メーカーが長いあいだ量産してきたのはまさしくこれらの「国産ワイン」にほかならず、表示ルールが変わっても、「国内製造ワイン」の大半が「(旧)国産ワイン」である現状は変わりません。この「大半」が80%を示すのか90%を示すのか、正確な数字は分かりませんが、すくなくとも1000円以下の(数百円の)「国内製造ワイン」は100%「海外原料使用」ワインだと思います。

さすがに表ラベルに「濃縮果汁使用」などと書かれていると、手に取ったきに、なんらかの躊躇を感じる消費者も多いことでしょう。もちろん、それでも安ければ構わないといって買う人もいると思いますが、メーカーとしては、FTAやEPAなどで関税が安くなる海外産のワインを直接輸入して売るほうが、わざわざ輸入した濃縮果汁を薄めてワインにするより手間がかからなくてよい、と考えるかもしれません。今後、表示ルールの改訂が安いワインの市場にどのような影響を与えるか、注目したいところです。