Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年04月24日

消えたヴィンヤード

山形県は果物王国で、ブドウの生産量も、山梨県、長野県に次いで日本第3位です(岡山県が第4位)。ワインの分野でも、タケダや高畠を初めとする日本屈指のワイナリーを擁するほか、小規模ワイナリーも増え、新規参入の動きも活発化しています。アカデミー4期生の中川憲一郎・淑子夫妻も、委託醸造のワインを初リリースしました。

中川さんの本拠地は、かつてワイン用のブドウ畑があったところだそうです。中川さんが畑の準備をしていると、周辺の農家のみなさんは、またワインぶどうを植えるのか、と怪訝な顔をしたといいます。かつて、せっかく栽培していたブドウの樹を全部引き抜いた、苦い経験があったからです。

そこは、赤玉ポートワインの原料ブドウを栽培する契約農地だったのです。1970年代の中頃から消費者の嗜好が「本格ワイン」に移行して、甘味ブドウ酒が売れなくなったので、
生産農家は契約を打ち切られて栽培を中止したのです。その苦い経験を思い出して、そこでまたワインぶどうを育てるという、中川さんの考えが理解できなかったのでしょう。