Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年05月31日

アララット山

アララット山の麓には、私も行ったことがあります。昔、マンズワインのPR誌に原稿を書いていたとき、「甲州ブドウのルーツを探して」というテーマの取材で出かけました。甲州ブドウはヴィニフェラ種の末裔ですから、これはヴィニフェラ種の原産地を訪ねるのと同じことで、そのためにロシア(当時はソビエト連邦)からジョージア(グルジア)に入り、土間に埋めた素焼きの壷でワインを仕込んでいる農家などを見てまわりました。チェルノブイリの原発事故が起こる、わずか2年ほど前のことでした。

ヴィニフェラ種(ヨーロッパブドウ)の原産地がアララット山の麓に近い場所であることは学問的に証明されているようですが、それが「ノアの方舟」の記述と妙な一致を見せているのはなぜでしょうか。聖書の編纂がはじまったのは紀元前5世紀から4世紀ごろ(いまから約2500~2400年前)ではないかと言われているので、ワイン用のブドウが7000年前にはすでにヨーロッパ各地に広まっていたとするなら、旧約聖書をまとめた(神話を伝える口碑を編纂した)ユダヤ人たちが、その事実を基に「ノアの方舟」の物語をつくった、ということになりますね。