Column[ 読みもの ]
日本のワインのこれからを考える 2019
2019年06月07日
方舟の残骸
アララット山麓のどこかに「ノアの方舟」の残骸が埋まっている、という説は繰り返し唱えられ、数千年前の炭化した木片が見つかったとか、人工衛星が氷河の下の船影を撮影したとか、さまざまな報告がありますが、どこまでが多少とも信憑性のある説で、どこからが「トンデモ説」なのかは、分かりません。
私が35年前に行ったときは、残骸があると推定される標高4000~5000メートルの山腹はただ下から見上げるだけでしたが、山麓の町に近い小高い丘の上にあるアルメニア正教の教会で、面白い体験をしました。その日は教会に生贄を捧げる祭りの日で、信者が次々と鶏や羊を神父に渡しては祝福を受けていましたが、奉納された動物はすぐ祭壇の裏にある屠畜場に回され、裸の男が斧を振って処分すると、切り分けた肉は横にある大釜で茹でてから信者に返されます。それをもらって信者たちは、教会のまわりの草原でピクニックを楽しむのです。
もちろん私はちゃっかりとその仲間に加わり、茹でた羊肉に塩を振って平焼きパンにはさみ、コリアンダー(香菜)をまぶして食べました。いっしょに飲むお酒は、ワインではなく、ワインを蒸留した「ラキ」と呼ばれるホワイトブランデーでした。