Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年06月19日

フィロキセラ

アメリカ東海岸へのヴィニフェラ種植栽が失敗したのは、北部における冬の低温や南部における夏の高温と多湿だけが障害ではなく、実はフィロキセラという虫がおもな原因であることが、後になって分かりました。フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)というアブラムシ科の昆虫は、ブドウの樹の根や葉に入り込んで虫瘤をつくり、樹液を吸い取って、やがては樹の全体を枯らしてしまいます。

フィロキセラはアメリカ原産の虫なので、アメリカ大陸に野生するヤマブドウはもちろん、ラブルスカ系の栽培種にも耐性があり、フィロキセラがいる環境でもブドウは健全に生育します。が、ヨーロッパから導入されたヴィニフェラ種には耐性がまったくなかったため、次々とやられて死んでしまったのです。

フィロキセラがヴィニフェラ種にとって最悪の害虫であることが明らかになったのは19世紀の後半で、この頃にはすでに大量のアメリカブドウの苗木がヨーロッパに輸入されていました。そのためアメリカブドウの苗木についていたフィロキセラが蔓延し、フランスをはじめとするヨーロッパ各地のブドウ畑で、既存のヴィニフェラ種のブドウがほぼ全滅するような大被害が発生したのです。