Column[ 読みもの ]
日本のワインのこれからを考える 2019
2019年07月02日
ワイン生産国の常識
さて、本の宣伝が終わったので、これまでの連載の続きに戻ります。話は、ヨーロッパ各地のブドウ畑がフィロキセラの被害で全滅したのを契機に、ヴィニフェラ種のブドウの穂木をアメリカブドウ(ラブルスカ種)の台木に接ぎ木をするという方法が考え出された……というところまで、でした。
この、ラブルスカ種の台木にヴィニフェラ種の穂木を接ぐ、という苗木のつくりかたは、いまでは世界中のワイン生産国の常識になっています。ラブルスカ種の本場であるアメリカでも、穂木(果実の生る枝木)にはヴィニフェラ種を使います。
南半球のチリやオーストラリア、あるいは中国の一部などにはフィロキセラがいない「非汚染地域」があるとされ、そこでは台木を使わない自根栽培(「接ぎ木」ではなく、穂木を直接土に挿す「挿し木」で育てる)がおこなわれているそうですが、そのときも挿し木にするのはヴィニフェラ種です。
つまり、世界中のワイン生産国では、「ワインはヴィニフェラ種でつくる」ということが、暗黙の了解になっているのです。