Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年07月09日

フォックス・グレープ

ヴィニフェラ種でつくったワインにはない、ラブルスカ種でつくったワインだけにある、ある種の独特な芳香。これを彼らは、「フォクシー・フレイバー foxy flavor」すなわち「キツネの(ような)匂い=キツネ臭」と名づけました。

この「フォクシー」という形容がどこから出てきたのか、語源については諸説があってはっきりしませんが、アメリカでは野生のブドウのことを「フォックス・グレープ」と呼んでいたのでそういう名がついた、という説が、私はもっとも妥当ではないかと思っています。イヌサフラン、ウマゼリ、キツネアザミなど、有用植物や鑑賞植物の野生種や近似種(で、あまり役に立たないもの)に、犬、馬、狐などの動物の名を冠することは、洋の東西を問わずよくあることだからです。

これがどんな匂いか、言葉で表現するのが難しいので、多くの場合、「ウェルチのジュースの匂い」などと言ってごまかします。アメリカの「ウェルチWELCH」社が1869年からつくっているグレープジュース、と言えば、あの独特の香りをすぐに思い出す人も多いでしょう。