Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年08月06日

日本ワインの多様な品種

明治の初期にヴィニフェラ種の定植がうまくいかず、その結果、より日本の気候で育てやすいデラウェア、ナイアガラ、コンコードなどのアメリカ系品種を導入した経緯が、その後の日本ワインの性格を決定づけていきました。

日本人にとっての「ワイン」のイメージをかたちづくってきた「赤玉ポートワイン」は、「怠け者のブドウ」を原料の一部にした甘味果実酒です。ふつう(世界の一般的な例では)、ヴィニフェラ種による本格ワインが受け容れられるようになると甘味果実酒は飽きられて姿を消していくのですが、日本の場合はその後も「甘いワイン」が長く命脈を保っただけでなく、アメリカ系品種によるワインづくりは全国の各地で受け継がれていきました。

それは、生食用のブドウのうちで余ったものが「加工用」としてワインづくりに回される、という事情が長く続いたこともあるのですが、1970年代なかばに「本格ワイン」の消費が「甘味果実酒」の消費を上回ったときも、日本のワインメーカーは海外から原料を輸入することで急増する需要に対応する道を選んだため、ヴィニフェラ種を定植して育てる機会を逸してしまったのです。

その結果、日本で生産される日本ワインは、世界でも例を見ないほど多様な品種が共存することになりました。