Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年08月13日

川上交雑品種

日本の風土と気候の下で、なんとかワインになるブドウを育てたい。そう考えた川上善兵衛は、私財を投じて育種に取り組みました。みずからフランスから原書を取り寄せて勉強し、さまざまな品種を集めてかけ合わせながら、日本に最適なワインぶどうを求める試行錯誤が続きました。試みた品種交配は1万回を超え、その中からとくに優良な22品種が世に送り出されました。

とくに有名なのは、「マスカット・ベーリーA」と「ブラック・クイーン」でしょうか。「マスカット・ベーリーA」は、アメリカ系のベーリー種とヨーロッパ系のマスカット・ハンブルク種をかけ合わせたもの。いまでも山梨県を中心に広く栽培されており、日本の赤ワイン用ブドウ品種としては量的にも重要な地位を占めています。「ブラック・クイーン」は、同じくベーリー種とヨーロッパ系のゴールデン・クイーン種をかけ合わせたもの。こちらは長野県でも多く栽培されています。

川上善兵衛は、生涯を通じて品種改良とワイン生産に全霊を捧げ、莫大な資材をそのために蕩尽して最後はほとんど無一文で死ぬという、劇的な人生を送った傑物です。詳しいことを知りたい方は、木島 章『川上善兵衛伝』TBSブリタニカ(サントリー博物館文庫)を参照してください。