Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年08月16日

日本のヤマブドウ

日本には、もともとヤマブドウがありました。ヨーロッパブドウの原生種で氷河期を生き延びたのは1種類(ヴィニフェラ種の祖先)だけ、と言いましたが、アジア東部地域の原生種には、ロシア・中国東北部・朝鮮半島などに自生する「アムレンシス種vitis amurensis(アムールぶどう/満州ヤマブドウ)」と、日本列島・南千島・サハリンなどに自生する「コアニティー種vitis coignetiae」の2種類があり、さらに日本独自のヤマブドウとして、アマヅルやエビヅルその他の名を持つ10種類以上の自生種が確認されているそうです。

天然のヤマブドウが完熟して果汁を滴らせ、それが岩の窪みかなにかに溜まって自然に発酵したものが「最古の天然ワイン」だとすれば、それを知った古代人が同じ過程を再現したものが「人類最古のワイン」である、ということになりますが、だからと言って「日本では縄文時代からワインがつくられていた」と主張するのは、ややショービニズム(愛国主義)が過ぎるかもしれません。

ただ、日本原生のヤマブドウからワインをつくる、という考えには心を動かされる人も多く、日本各地でヤマブドウを原料としたワインづくりがおこなわれています。とくに、気候的にヤマブドウ以外の品種を栽培するのが難しい東北や北海道の一部では、雨や病気に強いヤマブドウの特徴を生かしながら、収量の多い栽培品種化をめざす取り組みも盛んです。