Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年08月27日

野生的な匂い

私は青年の頃にフランスでワインの味を覚えた者なので、フランス人の「キツネ臭嫌い」
が、身についてしまいました。いまでも、ラブルスカ種やそのハイブリッドからつくった
ワインは、自分から飲もうとは思いません。また、ヤマブドウのワインも、酸っぱいだけ
でなくその野性的な匂いが気になって、飲みたいとは思わないのです。許容範囲が狭い偏
狭な人間だと言われても返す言葉がありませんが、いまさらこの歳になって嗜好を変える
のは無理だろうと思うので、赦してもらうほかありません。

ヨーロッパには、ヴィニフェラ種の仲間以外のブドウは存在しない、と言いましたが、無
数にあるヨーロッパ各国の在来種の中には、「キツネ臭」とまでは行かなくても、それに近
いような、独特の野生の香りを持つ赤ワイン品種があります。ヴィニフェラ種が栽培種に
なる前の、ヤマブドウの特徴を残しているのでしょうか。

その種のワインは、古くからそれが原産する狭い地域だけでローカルワインとして消費さ
れており、海外はもちろん、地域外にも流通しないのがふつうです。