Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年09月03日

ポルトの居酒屋

私が「ヴィーニョ・ヴェルデ」を飲みにポルトガルに足繁く通うようになったきっかけは、
ポルト(オポルト)の街で偶然見つけた居酒屋でした。男たちが店の前にまで溢れて立ち
飲みしているようすに惹かれて中に入ると、店の真ん中に巨大なワイン樽が置いてあり、
そのまわりがぐるりとカウンターになっていて、樽から直接コップに注いでもらったワイ
ンを大勢が立ったまま飲んでいます。カウンターにはハムやチーズ、天ぷらなどが並んで
いて、ワインのおともにちょっとつまむこともできるのでした。

このときはじめて飲んだのが「ヴィーニョ・ヴェルデ」でした。発泡性のある、酸味が強
い、粗雑なつくりの地酒ですが、その荒々しい野趣に私は衝撃を受け、いっぺんに好きに
なりました。それから、このワインはポルトから東北の地域一帯(ミーニョ地方)でだけ
つくられていることを知り、その翌年から通うようになったのです。

友人たちと4人でクルマを借り、行く先々で「ヴィーニョ・ヴェルデ」を飲みながら、夕
方になったらホテルを探して泊まる、その繰り返しですが、村が変われば地酒の味も変わ
り、飽きることがありません。現地の人が持っているような通い瓶を買って、酒蔵があれ
ば酒蔵へ、なければ村のバールへ行き、まずはそこで飲み、さらにその通い瓶に注いでも
らって宿まで持ち込むのです。通い瓶にはいわゆる機械栓と呼ばれる金具を指で押して開
閉する蓋がついていますが、もともと発泡性のあるワインなので、クルマに載せて田舎の
ガタガタ道を走っているうちに栓が飛び、座席がびしょ濡れになったこともありました。