Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年09月06日

ヴェルデは地元で樽から飲む

当時、ボトルに詰めて売っている「ヴィーニョ・ヴェルデ」は、私が探した限りではリス
ボンに本拠を置く「ガタオ(ン)=GATAO(Aの上に~という記号がついて鼻母音にな
る)」というメーカーだけでした。猫のマークで知られるこの有名メーカーはいまも健在で
すが、当時のポルトの人たちは、「ボトルに入ったのはヴェルデじゃない。本物のヴェルデ
はミーニョ地方で飲ませる樽詰めだけだ」と口を揃えて言うのでした。

その頃、私はあるレストランの企画を考えていたので、この野趣に富んだ爽やかな白ワイ
ンをぜひ日本で売りたいものだと思い、地元の酒蔵に相談しました。発泡性ですが、ビー
ルを入れる金属製のケグに詰めて輸入すれば、タップで飲ませることができるはずです。
が、私が「ヴィーニョ・ヴェルデを輸入したい」と言ったら、どの酒蔵でも、「こんな安酒
を輸出するなんて馬鹿げている。これは地元の村で飲むものさ」と言って、みんなに鼻先
で笑われました。

あれから20数年、いまではボトル詰めの「ヴィーニョ・ヴェルデ」がたくさん輸入される
ようになり、ポルトにももう樽から飲ませる居酒屋はありません。田舎の村に行けばまだ
通い瓶に詰めてくれる酒蔵があるかもしれませんが、ずいぶん時代が変わったものです。