Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年09月13日

東西の嗜好

日本では、ナイアガラからつくったジュースやワインは、けっこう人気があります。あの
独特の華やかな香りはいわゆる「キツネ臭」に相当するものですが、それを理由に嫌う人
は、日本人にはほとんどいないでしょう。

が、フランス人は、ワインはもちろん、ジュースでさえも、臭いを嗅いだ途端に拒絶反応
を示すのです。おそらく、赤いヴェルデの「野生の香り」にも、否定的な反応を示すと思
います。それが地元に古くから伝わる在来のヴィニフェラ種でつくられたワインであって
も、ラブルスカ種の「キツネ臭」に近いものを感じるのではないでしょうか。

ヴィーニョ・ヴェルデの関係者によれば、赤いヴェルデの「野生の香り」も、日本人など
のアジア人や、ロシア人には抵抗が少ないのではないか、と言っていました。複数のヤマ
ブドウ品種が氷河期を生き延びて後世に伝えられたアジアとロシア(ユーラシア大陸の東
半分)では、その種の香りに対して寛容なのではないか、と言うのです。

日本でも、ナイアガラやコンコードのワインが好きな人や、ヤマブドウのワインが好きな
人がたくさんいます。そういう人たちは、ワインを「飲み慣れて」いくうちに、やっぱり
ヴィニフェラがいい、といって方向転換をするのでしょうか。それとも、ヴィニフェラの
ワインも飲むが、ラブルスカやヤマブドウの味も忘れられない、といってそれらを飲み続
けるのでしょうか。世界中の国でワインをつくるようになり、これまでワインを飲んだ経
験のない人がワインを飲むようになったとき、どのような嗜好の転換や拡大が起こるのか、
私にはとても興味があります。