Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年10月22日

それぞれの見方

官能審査委員会の審査委員からワインメーカーを排除するという方針は、日本人の感覚からすれば、きわめて妥当なものと思われます。ワインを造る人たちが自分たちの造ったワインを評価する、と言えば、いかにも「お手盛り」のような印象を与えるからです。

が、その後、世界の各国ではどのような官能審査をやっているのか、外国の事情を知っている人に聞いてみると、いろいろと意外なことがわかりました。フランスでは、地域によってやりかたはさまざまですが、多くの場合、ワインを研究する人(醸造学者、ワイン研究家などいわゆる有識者)と、ワインを販売する人(ワイン商)と、ワインを造る人(ワインメーカー)という、少なくとも三つの異なる立場の専門家が官能審査に携わる、としているようでした。

ワインの見方は、それぞれの立場によって異なります。この場合、ソムリエは「ワインを販売する人」に分類されるのだと思いますが、たとえば「売る人」と「造る人」では、ワインを評価する観点も当然違ってくるでしょう。「売る人」は消費者の好みと受け取りかたを考えて評価するでしょうし、「造る人」は醸造の過程における瑕疵の有無や手段の選択とその効果が評価の基準になると思います。その意味で、ワインメーカーを審査委員に加えることは、審査の公平性を担保することに繋がる、というのが、世界の多くの国の考えかたのようでした。