Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2019年11月29日

ソムリエと評論家

日本では、ワインを評価する人、鑑定する人……というと、評論家(ジャーナリスト)というより、ソムリエ、ということになるでしょうか。日本でソムリエといえば、田崎真也氏の名前がまず上がります。国際ソムリエ協会でも会長を務めた、世界でも有名な斯界の第一人者ですから、彼がもしロバート・パーカーのように、ワインに点数をつけて「パーカーポイント」ならぬ「タサキポイント」として発表すれば、それによって市場価格が動くことは十分にあり得た(あり得る?)かもしれません。

ロバート・パーカーは「パーカーポイント」と呼ばれる100点満点の評価で世界のワインに点数をつけました。一時は、その点数の違いが大きく市場価格を左右する、と言われたものですが、最近は、パーカー氏の評価にも彼個人の好みがあることが分かり、また時代による嗜好の変化も反映して、かつてのパーカーポイントへの絶大な信頼はやや揺らいでいるようです。

評論家(ジャーナリスト)の立ち位置は、消費者(ワインを飲む人)の側にある、といっていいでしょう。一方でソムリエは、ホテルやレストランでワインの在庫を管理し、顧客にそれを売る(サービスする)のが仕事です。もちろん商品を売るにはお客さんの立場を忖度することも大切ですが、基本的に、ソムリエは販売者(ワインを売る人)なのです。

同じワインでも、飲む人と売る人では、それぞれの立場の違いが評価にあらわれても不思議ではありません。