Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2020年02月07日

新しいワインの登場

自然派ワインにも、いろいろなものがあります。そもそも「自然派ワイン」の定義からして曖昧ですが、無農薬か減農薬で栽培したブドウを、できるだけ果汁にストレスを与えない方法を用いて自然(野生)酵母で発酵させ、酸化防止剤はまったく使わないかごく少量だけ使用する……という程度の定義を採用した場合でも、できあがってくる「自然派ワイン」は千差万別です。

従来の慣行的な方法で造られたワインと、それほどの違いが感じられないものから、明らかに自然派の特徴があらわれたもの、さらには、従来の基準では到底正常とは判断されないものまで、多種多様です。世界のワインコンクールで審査員をするような専門家は、これまでに彼らが築き上げてきた判断基準が適用できない、新しいワインの登場に困惑しているのです。

培養酵母ができるまでは、すべてのワインが自然派(自然酵母による発酵)でした。が、発酵を自然酵母にまかせると、雑菌が入るなどして状態が安定しないので、より確実に「きれいなワイン」をつくるために、培養酵母が用いられるようになりました。現代の自然派ワインは、こうした「近代の慣行」に異を唱えるものです。近代化したために失われた、本来の自然の良さを取り戻すために、より自然に近い状態でブドウがワインになる過程を見守ろう、という立場です。そのため、多少の雑菌が入るのも自然らしくてよい、と考える人も多くなりました。慣行的なワインを対象に評価基準を練り上げてきた専門家には、この点がもっとも受け容れ難いのだと思います。