Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2020年02月12日

病気と正常

できあがったワインに雑菌が入っていたら、それは「病気」であって、「正常」の範疇から逸脱している、と考えるのが近代の慣行です。世界が進めてきた近代化、工業化の価値観は、より効率の良い生産性を求めるので、病気や欠陥は排除されるべきものでした。
が、いまの新しい時代では、「病気や障害も個性のひとつ」と捉える感覚が芽生えてきました。行き過ぎた近代化にブレーキをかけ、人がより自然に近いところで暮らしていた、少し前の段階に戻ってみよう、と考える人たちは、そうした考えに賛同します。

自然派ワインのもつ、まったりとした、緩やかな感じ。素直に、スッとからだに入ってくる感じ。私はそれほど自然派ワインを飲んだ経験はありませんが、そこにはたしかに、多少の雑菌が入っていることを許す、というか、あまり(人為的に)きれいに仕上げたものよりは、雑菌が醸し出す豊かさのようなものを好む感受性があるのだと思います。

しかし、専門家による従来の基準を適用すると、少しでも雑菌の混入が感じられるワインはすべて「病気」であり、造りかたに瑕疵がある、と判断されてしまいます。だから自然派ワインは、国際的なコンクールに出品しても最初から相手にしてもらえないのです。