Column[ 読みもの ]

日本のワインのこれからを考える 2019

2020年03月03日

小規模ワイナリーのカルトワイン

日本のワイン産業は、いま急速に発展しています。その原動力は、10年ほど前からはじまった、ドメーヌ型の小規模ワイナリーの急増にあります。自分の畑でブドウを育て、そのブドウでワインを造る、自園自醸のインディーズ・ワイナリーが増え、その波に大手ワインメーカーも刺激されて、過去の日本産ワインとは一線を画す、世界基準のワインを造ろうというモチベーションが共有されるようになりました。

個人が自力ではじめるような小規模ワイナリーは、初期投資が過大なため長期間にわたって多額の借金を抱え、必然的に生産コストも高くついて、ワインの価格に反映します。酒類は一般に酒販会社に卸して売ってもらうのが通例ですが、こうした小規模ワイナリーの場合は、酒販会社が利益を得られるような卸売価格を設定することができません。卸売りをするとしても掛け率は75~90%になり、50%程度の輸入ワインとは比較にならないので、取り扱ってくれる酒販店が少ないのです。

だから、小規模ワイナリーが利益を少しでも確保するためには100%の価格で直販するしかないのですが、それ以前に、生産量が少ないので卸売りに出して全国に売るほどの本数がない、という事情もあります。したがって、どこを探してもワインが買えない。フェアやイベントを探して飲みに行くか、ワイナリーを直接訪ねて買うか、ワイナリーの通販サイトがあればそれで買うか……そのため全国の小規模ワイナリーのワインは、ほとんどの人が飲んだことがないうちから、手に入りにくい貴重なカルトワインになるのです。